準備は10時から始めた。12:45分に家を出ることを想定して、充分に時間に余裕をとった。準備に2時間45分もあるのだから、終わらないわけない。
私の頭の中では髪のセットに1時間、メークに30分、着替え・その他に20分くらいのつもりでいたので、(全て準備が終わっても、ブログ書く時間もあるな)なんて思っていた。
オメカシする時って結構楽しい。頭の先から足の先まで自分の体に気を配ることなんて、私の人生にそうそうない。私はこれから始まる変身に上機嫌でいた。
練習した通り、3面鏡とにらめっこしながら髪のアップを始める。えーと、髪をブロッキングして・・・止めて・・・ピン入れて・・・。ここで問題発生。
ピンを少し開こうと、指を間に挟んだ後、自分の爪は”今乱暴な扱いをしてはいけない状態”だということに気付く。このまま髪にピンを刺して、指を抜けば絶対にネイルに傷がつく。駄目だ。指を抜かなきゃ。歯でピンを軽く噛み、爪を傷つけないようにそーっと外す。とその時、「イテテテテテ」
ピンで上唇挟んじゃった。超痛い。泣きたくないのに、痛さで涙が出る。指挟めないから、そのまま勢いでピンを開かずに唇から外す。
(オー。ノー。唇の皮がはがれたと思たネー。クソー。ピンの野郎・・・・)
ふいに起きたアクシデントにちょっと一抹の不安がよぎる。
これは困った。ピンがさせないとアップヘアはできない。そこでスペシャル助っ人を呼ぶことにした。
「ねーねー、ピン刺してー」
旦那がヌッと現れる。もちろん美容師経験ゼロ、自分の髪をワックスで仕上げることが精一杯の旦那である。それでも、”爪を気にせずオニピンを扱える”というだけで、今の私にとってとても心強いパートナー。
幸い、美容室ではアップのやり方を旦那も間近で見ていた。いっぱい写真やムービーも撮っていた。「できない、無理無理」と嫌がる旦那を「大丈夫、ピン刺すだけだから!」と説得し手伝ってもらうことにした。
二人揃ってパソコンのムービーを見る。3分間に納められた映像は、神業のようにチャキチャキと髪を止めていく。2、3回見て確信を得、鏡台のある部屋に移動する。
「そう、そっちからそっちの方向へ・・・・」
何度か失敗したものの、数回やり直しをしているうちに、上手になってきた。ねじりあげて止めた髪は旦那が刺した一本のピンによって、しっかりと止まっている。
「スゴイ!天才じゃん!?」共同作業は楽しく進む。
両側の髪が止まったので、今度は後ろで縛った髪をフワッとさせつつピンで留める作業だ。これがとっても難しい。私がねじるとただのお団子になってしまう。無造作感なんてかけらもない。かといって、まとまってない髪は、スカスカすぎてどこにピンを刺していいのかも分からない。例え「ここぞ」と思う所に刺したとしても、すぐにバラバラと落ちてきてしまう。
何度も何度もやり直しているうちに、髪全体が崩れはじめる。
「・・・・もう一度初めからやろうか」
全部髪を外し、最初から作業をやる。旦那も飽きずに付き合ってくれる。が、しかしやっぱり最後のフワッと留めるができない。幾度となくムービーを見るがポイントがつかめない。鏡台とPCを行ったり来たりして、試行錯誤するものの、一向に髪は留まらない。時間は刻一刻と過ぎるし、気持ちは焦るばかりだ。
4度目の最初からやり直しのとき、旦那が言う。
「コレを最後にしよう。もし、出来なかったら、髪を全部下ろして行ったら?」と。
確かにその意見はごもっともだ。時間は既に11:40を過ぎているし、メークも着替えもこれからだ。1時間半以上かけて準備してるにも関わらず、全く成果がないという虚しい状態。「そうだね」と決心して最後のチャレンジへと突入した。ブロッキングもピン留めも上手くいく。もはや旦那はピン留めのプロである。(これさえ決まってくれれば)髪をふんわり留める作業の時、ちょっと機転を利かせてUピンだけで留めるのではなく、普通のオニピンも使ってみることにする。
すると・・・・上手に行った!ふんわりと、だけどしっかりと留まったのだ!!
「おぉ〜〜」二人で拍手する。(あぁ、この髪型で結婚式に行けるんだ!)と思うとうれしくなった。
Uピンでさらに補強し、ヘアアイロンで毛先をクルっとさせ、仕上げにキラキラスプレーをかける。パーティヘアのできあがりである。
いやーお疲れお疲れ。一時はどうなることかと思ったよ。我が家に安堵感が広がった。
(これで次からも自分でセットできるね!)と上機嫌でメークしてる私の心とは裏腹に、背後から旦那の声が聞こえてきた。
「次からは美容院行ってね」